地方分権

出先機関改革について

Posted by hsaitoh on 2月 06, 2012
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国家行政組織法にもとづき国が地方に設置する中央省庁の地方支分部局、いわゆる国の出先機関について、現政権は国から地方に移管するための閣議決定を今年度内に行う予定とされています。

この出先機関改革について、挨拶回りをするなかで見解を求められましたので、コメントしておきたいと思います。

結論から申し上げますと、私は出先機関の定員削減や給与見直しなどは国家公務員改革の一環として積極的に取り組むべきと思いますが、出先機関の廃止(地方への移管)は現時点においては拙速と考えており、準備不足のままで移管を強行することは、むしろ地方分権の動きに逆行することから慎重に対応すべき、と考えます。以下、理由を述べます、。

まず出先機関改革を含む地域主権戦略の目的を確認しますと、地域主権戦略大綱(平成22年6月閣議決定)の冒頭に、次のようにうたわれています。

(前略)国と地方公共団体の関係を、国が地方に優越する上下の関係から、対等の立場で対話のできる新たなパートナーシップの関係へと根本的に転換し、国民が、地域の住民として、自らの暮らす地域の在り方について自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負うという住民主体の発想に基づいて、改革を推進していかなければならない。

この目的には、私も異論がありません。国と地方の関係が上意下達の関係であってはならないと考えます。問題は、その改善のための方法論として、出先機関廃止がどのような意義を持つかです。

上記の大綱には、「国民が、地域の住民として、自らの暮らす地域の在り方について自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任を負う」とありますが、「自ら考え、主体的に行動」するには、情報やノウハウの蓄積が不可欠です。

つまり、しばしばみられる事例ですが、どこかの地方自治体が、ある政策課題に対する新たな対応策を検討したとき、その対応策は他の地域で既に実施済みであったりすることがあります。このような場合、国の出先機関が各地方に存在していれば、気軽に問い合わせることができ、先行事例の情報を収集したり、ノウハウの提供を受けることができます。

また、例えば地方整備局(国土交通省)を国から県に移行したとしても、国と市町村との関係が県と市町村との関係に変わるのであれば、(県のほうが国よりもより効率的または効果的に行政を執行できるとの前提に立たない限り)移管自体は必ずしも意味を持ちえないことになります。

さらに災害対応などの点で懸念されるのは、従前、

(1)市町村→出先機関→国

(2)市町村→県→国

と2ルートあった市町村と国とのコネクションが、(2)の県を介したコネクションに一本化される点です。

これでは、平時はともかく有事には県に過度の負荷がかかるおそれがあります(例えば広域合併が進んだ現在でも、新潟県には30もの市町村があります。)。これらの懸念は自治体サイドからも提起されており、各地の市町村長会・知事会が出先機関改革に慎重な意見書を提出しています。

出先機関には国家公務員30万人のうち20万人が勤務していることから、その待遇の見直しは財政再建と、国の統治の正当性の回復のため、不可欠です。

しかし同時に、行政を執行する上で、大きな財産である情報やノウハウの共有という観点からは、出先機関を国から地方に移管することが、地方分権との関係で必ずしも論理必然とはいえないと考えます。

また、東北大震災や福島の原発事故の教訓として、地方と国との意思疎通ルートの確保、そして各地に県や市町村とは違う立場で被災地対応ができる組織の必要性・優位性が明らかとなりました。

以上のことから、出先機関改革は、公務員改革全体のなかでの待遇見直しなどを先行して行うこととし、移管については、受け皿があるかどうか、自治体・住民が望んでいるかどうか、有事対応は大丈夫か、などの論点を十分に検証した上で取り組むべき、と考えます。

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